Column

デジタル遺言とは?2026年法改正で変わる、遺言のカタチ

コラム
デジタル遺言とは?2026年法改正で変わる、遺言のカタチ

「遺言書を残したいけど、全部自分の手で書くのは体がつらい」

「パソコンで書いた文書じゃ、遺言として認められないの?」

そんな声が、長い間多くの方から聞こえていました。2026年4月、その状況が大きく変わろうとしています。政府は、パソコンなどで作成した遺言書を法務局が保管する「保管証書遺言」を新設する民法改正案を閣議決定し、国会に提出しました。

今回は、この「デジタル遺言」と呼ばれる新しい制度の概要を、できるだけわかりやすくご説明します。そして、法律が変わっても、映像という形でしか遺せないものがあることも、合わせてお話しさせてください。

何が変わるのか?——「全文手書き」の壁が崩れる

これまで、費用をかけずに自分で書ける遺言(「自筆証書遺言」)には、ひとつの大きなルールがありました。本文の全文を、自分の手で書かなければならないというルールです。

パソコンで文字を打って印刷したものは、どれほど丁寧に書いても、法的な遺言としては認められませんでした。高齢になって手が震えていても、持病で長時間字を書くのが難しくても、です。

2019年の法改正で、財産目録の部分に限ってパソコン作成が認められるようになりましたが、肝心の本文は依然として「自書」が必須でした。

今回の改正案は、この壁を取り払う内容を含んでいます。パソコンやスマートフォンで作成した電子データを、「保管証書遺言」として法務局に保管できるようにするという、遺言制度の根本的な見直しです。

「保管証書遺言」とはどういうものか

新制度の具体的なイメージを整理しておきましょう。2028年前後の施行が見込まれており、今後の国会審議を経て詳細が確定しますが、現時点で示されている概要は次のとおりです。

パソコンなどで作成する

遺言書をパソコンやスマートフォンで文書として作成します。これまで手書きが求められた本文も、デジタルデータで作成できるようになります。

マイナンバーカードで電子署名を付ける

「本当に本人が作ったのか」を確認するために、電子署名が必要になります。現時点ではマイナンバーカードを使った公的個人認証の活用が想定されています。手書きの印鑑や署名に代わる、デジタルならではの本人確認の仕組みです。

法務局で「全文口述」を行う

最も注目すべき要件が、この「全文口述」です。作成したデータを法務局に持参し、担当官(遺言書保管官)の面前で、遺言書に書かれた内容を自分の口で全文読み上げる必要があります。

この手順には重要な意味があります。「本人の意思で書いたか」「内容を理解しているか」を、言葉と声で直接確認するためです。電子データだけでは確認できない「本人の意思」を、あえてアナログな方法——自分の声で語ること——によって担保しようとしているわけです。

法務局がデータを保管する

法務局が電子データとして遺言書を保管します。自宅で保管する場合と異なり、紛失や改ざん、遺族に隠されるといったリスクがなくなります。また、従来の自筆証書遺言で必要だった「検認手続き」も不要になる見込みです。

デジタル化で、遺言はどう変わるか

この改正が実現すれば、遺言を残しやすくなる方は確実に増えます。長時間の手書きが体力的に難しくなった高齢の方、手が不自由な方、デジタル機器を使い慣れている方にとって、大きな前進です。

遺言書を作成した経験がある人が「遺言を書こうと思ったきっかけ」の約34%が「相続トラブルを避けるため」というデータがあります(Authense法律事務所調べ)。遺言書は家族を守るための重要な手段ですが、日本では親の相続時に遺言書があった割合はまだ約10%にとどまっています(生命保険文化センター調べ)。ハードルが下がることで、この数字が変わっていく可能性があります。

でも、デジタルで遺せないものがある

法律が変わっても、変わらないことがあります。

遺言書は「財産をどう分けるか」を記すものです。デジタルになっても、それは変わりません。しかし、「なぜそう決めたのか」「どんな想いでそれを望んだのか」は、遺言書という形式では残せません。

興味深いのは、新制度の「全文口述」という要件です。法務局の担当官の前で、自分が書いた遺言の内容を声に出して読み上げる——この手順は、遺言を「言葉で語ること」の重さを改めて示しているように思えます。

声に出すとき、人は単に文字を読むだけではありません。わずかな震え、間の置き方、声のトーン——そこに感情が滲み出ます。それを家族に届けることは、法務局での口述ではできません。

映像は、「なぜ」を遺す手段

「全文口述のリハーサルとして、事前に映像を撮っておきたい」という声がこれから増えてくるかもしれない、と感じています。法務局の前で緊張せずに自分の言葉を語るために、一度カメラの前で話してみる。そのとき撮った映像が、家族への最高の贈りものになる。

遺言書が「何を」残すかを決めるものなら、映像は「なぜ」を届けるものです。

法律の枠組みの中に収まらない想い——子どもたちへの感謝、配偶者への言葉、孫に伝えたい生き方のこと——は、映像という形でしか残せません。声のトーン、話すときの表情、少し言い淀む瞬間。それは文字には写せないし、AIが後から再現するものでもありません。生きている今の自分が、自分の声で語る。その瞬間だけに宿るものがあります。

遺言書と映像を、組み合わせて使う

遺言書と生前映像は、どちらか一方ではなく、組み合わせて使うことで本来の力を発揮します。

遺言書が「財産をこう分けてほしい」という意思を法的に示すなら、映像は「なぜそう決めたのか、何を大切に生きてきたのか」という言葉を、温かく届けます。遺族にとって、両方があることで、故人の意図がずっと伝わりやすくなります。

デジタル遺言の時代が近づいているからこそ、「法律でできること」と「映像でしかできないこと」を分けて考えてみてください。


結い言(ゆいごん)は、合同会社トルアスが運営する生前メッセージ映像サービスです。テレビ局出身の代表・大平が、インタビュー形式で丁寧にお話を伺い、ご家族が何度も観返したくなる映像に仕上げます。遺言書の補足として、また家族への最後の贈りものとして、映像を残すことを検討されている方はお気軽にご相談ください。詳しくは yuigon-syukatsu.com をご覧ください。

Yuigon

結い言は、ご本人の声と言葉で大切な人へメッセージを遺す映像サービスです。まずはお気軽にご相談ください。