Column

テレビ局を辞めて、伝えたかったこと——代表・大平が生前映像サービスを始めた理由

コラム

「なぜ映像制作の会社が、終活のサービスを?」

結い言(ゆいごん)についてお話しすると、よくこう聞かれます。たしかに、映像制作とライブ配信を本業とする合同会社トルアスが、生前メッセージ映像という少し変わったサービスを始めたのは、業種だけ見れば唐突に映るかもしれません。

でも、代表の大平健人にとっては、ごく自然な流れでした。むしろ、やらないという選択肢がなかった、と言ったほうが正確かもしれません。

この記事では、結い言が生まれるまでの道のりを、少しだけお話しさせてください。

テレビ局で学んだ「伝える」ということ

大平は鹿児島工業高等学校の電子機械科を卒業後、鹿児島キャリアデザイン専門学校の映像学科に進みました。映像の世界に惹かれたのは、カメラを通して人の表情や言葉を切り取ることに、言い表しがたい手応えを感じたから。卒業後は株式会社放送技術社に入社し、テレビ局の現場に身を置くことになります。

最初の配属は長崎文化放送(ncc)。3年間、放送の基礎を叩き込まれました。その後、地元・鹿児島放送(KKB)に異動。カメラマン、報道編集、パブリシティ番組の編集、VE(ビデオエンジニア)と、映像に関わるあらゆる業務を経験します。キー局のバラエティ番組でロケカメラや音声を担当する機会にも恵まれました。

テレビ局での5年半は、大平にとって「伝える」ことの原点です。報道の現場では、限られた秒数の中でどう伝えるかが問われます。大切なのは映像の美しさだけではなく、そこにいる人の感情がちゃんと届くかどうか。表情の一瞬、声のトーン、間のとり方——テレビの現場で身につけたその感覚は、今の仕事のすべてに息づいています。

独立、そしてトルアスの設立

2022年10月、大平は個人事業として独立します。翌2023年2月には合同会社トルアスを設立。企業PRや採用動画、ライブ配信、クリエイター派遣を主軸に、鹿児島を拠点とした映像制作会社としてスタートしました。

「テレビ局で培った技術を、もっと近い距離で届けたい」。それが独立の動機でした。企業紹介、学校行事の配信、結婚式のプロフィールムービー。クライアントの規模や業種を問わず、「この映像で何を届けたいのか」を一緒に考えるところから始める。テレビ局時代に大切にしてきた姿勢は、独立後もそのまま続いています。

AIへの違和感、そして「結い言」の着想

トルアスの事業が軌道に乗り始めた頃、世の中にあるサービスが登場し始めました。AIが故人の声や表情を再現し、まるで本人が語っているかのようなメッセージを生成するというものです。

技術としては興味深い。でも大平には、どうしても拭えない違和感がありました。

映像制作の現場で何百人もの方にカメラを向けてきた経験が、大平にあるひとつの確信を持たせていました。言葉を選びながら語る姿、少しだけ言い淀む間、微かに潤む目——人が自分の意思で語る、その瞬間にしかない力がある。それはAIが再現できるものではないし、再現すべきものでもない。

「AIに喋らせるくらいなら、生きているうちに、本人の声で撮ればいい」

シンプルな発想でした。でもそのシンプルさの中に、大平がテレビ局時代から大切にしてきた「伝える」ということの本質があると確信しました。

2025年10月、生前メッセージ映像サービス「結い言(ゆいごん)」を正式にスタート。「今を、贈る。」というコンセプトには、「いつか」ではなく「今」、自分の声で、自分の表情で、大切な人に想いを届けてほしいという願いが込められています。

ある方との再会

結い言を始めてほどなく、大平は幼い頃からお世話になった方と再会する機会がありました。その方は病を抱えていました。

大平は自ら申し出ました。「私がプレゼントとして撮りますよ」と。

けれど、すぐに撮影とはなりませんでした。カメラの前で大切な人に向けてメッセージを遺すということは、覚悟のいることです。その方にとっても、「撮る」ことは「遺す」ことであり、その重さに向き合う時間が必要だったのだと思います。

「今日、撮れないか」

ある日、その方から突然電話がかかってきました。

「今日、撮れないか」

大平はすぐにカメラを持って駆けつけました。

そのとき撮影した映像が、結果としてその方が遺した最後のメッセージになりました。亡くなる、わずか2週間前のことです。

カメラの前で語るその方の表情は、穏やかでした。伝えたい言葉がちゃんとあって、届けたい人がちゃんといて、そのために「今日」という日を選んだ。あの撮影の空気を、大平は今も鮮明に覚えています。

朝日新聞に掲載された「声を遺す」ということ

この体験は、朝日新聞でも取り上げていただきました。

記事を読んだ方から「自分も家族にメッセージを遺したい」「親が元気なうちに撮っておきたかった」という声を多くいただきました。結い言を始めたきっかけはAIへの違和感でしたが、この方との撮影は、大平にとって「やるべきだ」という確信を決定的にした体験でした。結い言を続けていく原動力は、あの日の撮影の中にあります。

人が寄り添うから、届く言葉がある

結い言のサービスの特徴のひとつは、インタビュー形式で撮影を行うことです。

カメラの前で自分の思いを語るのは、多くの方にとって初めての経験です。何を話していいかわからない、照れくさい、うまく言葉にできない。そんなとき、大平が丁寧に問いかけながら、ご本人の中にある言葉を一緒に引き出していきます。

テレビ局の報道現場で取材対象者の声を引き出してきた経験、何百もの現場で人の表情を撮り続けてきた経験。それらが、結い言の「聞く力」の土台になっています。台本通りに読み上げるのではなく、対話の中から自然に生まれた言葉だからこそ、観る人の胸に届くものがある。大平はそう考えています。

AIでもスマートフォンでもなく、プロのカメラマンが、人として寄り添いながら撮る。結い言が大切にしているのは、その一点です。

声と表情は、手紙にならない

手紙には思いを込められます。写真には姿を残せます。遺言書には財産の分け方を記せます。

でも、声のトーン、話すときの癖、笑ったときの目じり、少し照れくさそうにする表情——それらは、どれだけ丁寧に言葉を綴っても紙には写せません。そして、残された家族の中で、声の記憶は少しずつ薄れていきます。

大平がカメラを通して遺したいのは、その人が生きている「今」の姿です。完璧に整えられた言葉ではなく、少し言い淀みながらも一生懸命に語る、ありのままの姿。

「今を、贈る。」

結い言は、あなたの「今」を、大切な人への贈りものにするお手伝いをしています。声と表情は、手紙にならない。だからこそ、映像で遺す意味がある。

もし少しでも心に浮かぶ方がいるなら、それが始めどきなのかもしれません。


結い言(ゆいごん)は、合同会社トルアスが運営する生前メッセージ映像サービスです。鹿児島市を拠点に九州全域で対応しています。テレビ局出身の代表・大平が、インタビュー形式で丁寧にお話を伺い、ご家族が何度も観返したくなる映像作品に仕上げます。詳しくは yuigon-syukatsu.com をご覧ください。

Yuigon

結い言は、ご本人の声と言葉で大切な人へメッセージを遺す映像サービスです。まずはお気軽にご相談ください。